大判例

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大阪地方裁判所 昭和26年(行)26号 判決

原告 大西仙太郎 外一名

被告 大阪府知事 外一名

一、主  文

原告等の被告大阪府知事赤間文三に対する訴を却下する。

原告の被告大阪府北河内地方事務所長片山秀夫に対する請求を棄却する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

二、事  実

原告等は「昭和二十四年度第二種事業税賦課処分を取消す。被告が原告に対する昭和二十四年度第二種事業税の滞納処分として差押えた動産の差押を取消す。被告は右差押動産を原告に返還すべし。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めその請求の原因として原告仙太郎は大阪府北河内郡南郷村で農業を営んでいるものであるが、被告大阪府北河内地方事務所長片山秀夫(以下被告地方事務所長と略称する。)は昭和二十四年十月十二日原告仙太郎に対し昭和二十四年度第二種事業税の賦課処分をした。しかし原告仙太郎の昭和二十三年度における作付面積は水稲六反二畝二十八歩、蓮根二反七畝二十九歩であつて水稲は一毛作であり、蓮根は水稲の耕作ができないため作つているものであるからその収入に対し第二種事業税を賦課することは不当であり、且つ原告仙太郎には扶養家族が八人ある関係で所得税が零となつているのに事業税を課すのは不当である。従つて原告仙太郎に第二種事業税の課税対象となる所得があるものとしてした前記賦課処分は違法であるから原告仙太郎は同月十三日被告大阪府知事赤間文三(以下被告知事と略称する)に異議を申立てが未だ決定がない。よつてここに右賦課処分の取消を求める。

次に被告地方事務所長は昭和二十五年四月二十日右事業税の滞納処分として四球ラジオ・小箪笥・ミシン・三重塗箪笥各一個を差押えこれを北河内地方事務所へ運搬した。しかし右差押は前記のような違法な賦課処分に基くものである点、原告仙太郎が昭和二十五年二月十三日までに右事業税の一部として金千三百円を納入したのに拘わらずなされたものである点原告等の立会なくして行われたものである点において違法である。そこで原告等は同月二十五日右差押に対し被告知事に対し訴願を申立てたが何等の裁決がない。よつて右差押の取消、及び被告地方事務所長が保管する右物件の引渡を求めるため本訴請求に及んだものである。」と述べ、なお、原告末子は「右物件中小箪笥及び三重塗箪笥は原告末子の所有に係るものであるから原告仙太郎に対する滞納処分としてされたこれに対する差押は違法である。と述べた。(証拠省略)

被告知事指定代理人はまず「原告の訴を却下する。訴訟費用は原告等の負担とする。」との判決を求め、その理由として「原告等主張の第二種事業税の賦課並びに滞納処分は地方税法(昭和二十三年法律第百十号)第十八条第一項第三条、大阪府税条例(昭和二十二年大阪府条例第十号)第三条により被告知事の委任を受けた大阪府吏員たる被告地方事務所長がその権限においてなしたものであるから、本訴は処分庁たる被告地方事務所長のみが正当な当事者たりうるものであつて、被告知事は被告たる適格を有しない。従つて原告等の被告知事に対する請求は不適法な訴として却下さるべきものである」と述べた。

被告等指定代理人は本案につき「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として原告等の主張事実中原告仙太郎がその主張の通りの農業を営んでいること、被告地方事務所長が原告仙太郎に対しその主張のような賦課処分をしたこと、これに対し原告仙太郎より異議の申立がなされたこと、被告事務所長が主張のような滞納処分をしたこと、これに対し原告仙太郎が訴願を申し立てたことはこれを認める。

しかしながら、原告仙太郎は昭和二十三年度において蓮根耕作により金四万三千円の所得をあげているのであつて、本件課税処分の対象となつたのは右所得である。即ち被告地方事務所長は最初原告仙太郎の昭和二十三年度における蓮根耕作による所得を金四万七千円と決定し昭和二十四年度第二種事業税を標準賦課率に従つて金二千三百五十円と調定した上昭和二十四年九月二十七日付令書を以て第一期分として千百七十五円を賦課する旨原告仙太郎に通知した。(該令書には更に府税たる都市計画税及び村税たる事業税附加税が並記されていた)然るところ、原告仙太郎より異議の申立があつたので被告地方事務所長は調査の上その所得額を金四万三千円に減額し、昭和二十五年一月十日付書面を以てその旨通知し、更に同月十二日第二種事業税額を金二千百五十円と更正し、右税額より第一期分を控除した金九百七十五円を第二期分として納入すべき旨の令書を原告仙太郎に交付したものである。従つて米穀等による所得は右課税標準には算入されていない。原告等は蓮根耕作による所得は第二種事業税の対象とならない旨、及び所得税が賦課されないときは事業税は賦課さるべきでない旨主張するが何れも根拠がない。次に原告等は右事業税の一部が納入されている旨主張するが、それは村税たる事業税附加税に充当され、事業税は一切未納である。又差押に際しては原告等が立会を拒んだため司法警察官山口家久を立会わしめたものである。以上の通り本件課税並びに滞納処分はいずれも違法ではないから原告等の本訴請求は失当である。と述べた。(証拠省略)

三、理  由

先ず被告知事の本案前の抗弁について考えるに、本件第二種事業税の賦課並びに滞納処分が被告地方事務所長によつてなされたものであること、は当事者間に争なく、而して

被告地方事務所長は被告知事の委任に基づきこれをなしたものであること被告知事主張の通りであつて、かかる場合においては、行政事件訴訟特例法第三条に所謂処分庁とは受任庁たる被告地方事務所長を指すものと解すべきところ、原告等の本訴請求は右賦課並びに滞納処分の取消を求めるものであるから、被告地方事務所長のみが被告たる適格を有するものにして被告知事は正当な当事者たりえないものであるといわなければならない。従つて被告知事に対する原告等の訴は当事者適格のないものを被告とする点において不適法であるからこれを却下する。

そこで進んで被告地方事務所長に対する請求について判断する。成立に争のない乙第四号証、第八号証の一・二及び証人前田豊の証言によれば、被告地方事務所長が原告仙太郎の昭和二十三年度における蓮根耕作による所得を金四万七千円、その所得に対する昭和二十四年度第二種事業税の第一期分を金千百七十五円と決定し、同年十月十二日その旨の徴税令書を原告仙太郎に交付したこと被告地方事務所長が昭和二十五年一月二十五日右所得を金四万三千円に減額更正した上第二期分として金九百七十五円を納付すべき旨の令書を原告仙太郎に交付したことが認められるところであつて、右賦課処分に対し原告仙太郎が昭和二十四年十月十三日異議を申立てたこと、被告地方事務所長が昭和二十五年四月二十日右事業税徴収のため原告等主張の物件四点を差押えたこと、これに対し原告等が同月二十五日訴願を申立てたことはいずれも当事者間に争ないところである。

よつて右課税処分の適否について考えてみよう。原告が南郷村で農業を営み昭和二十三年度の蓮根作付面積が二反七畝二十九歩であつたことは当事者間に争なく、証人前田豊及び久保田与十郎の証言によれば、同年度における南郷村の蓮根耕作による所得は反当り平均一万四千円を下らなかつたこと、従つて原告仙太郎は同年度において蓮根の耕作により金四万三千円を下らない所得をあげたことを認められるのであつて、この点に関する証人大西友吉の証言は措信し難く、他に右認定を左右するに足る証拠はない。従つて被告地方事務所長が原告仙太郎に対しこの所得を課税標準として昭和二十四年度の第二種事業税金二千百五十円を賦課したことは何等違法でない。原告等は蓮根耕作による所得に第二種事業税を賦課するのは不当である旨及び所得税の賦課されないものに事業税を賦課するのは不当である旨抗争するが何等根拠のない独自の見解であつて採用するを得ない。

次に滞納処分に原告等の主張するような瑕疵があるかどうかを審究する。原告等は右事業税の一部を納入したのに拘らず、差押をなしたのは不当である旨主張するが証人前田豊の証言によれば、原告主張の内入金は村税たる事業税附加税に充当され右事業税には納入されていないことが認められるばかりでなく、たとえそれが原告等主張のように右事業税の一部として納入されたとしても事業税を完納するに足らない限り滞納処分をまぬがれないこと勿論であるから該主張は理由がない。更に原告等は右差押は原告等の立会なくしてなされたから違法であると主張するが成立に争ない甲第一号証によれば滞納者及びその家人たる原告等が不在のため司法警察官山口家久立会の下に差押えたことを認めうるから此の点に付何等の違法はない。最後に原告末子は前記差押物件四点中小箪笥及び三重塗箪笥は原告末子の所有に係るから原告仙太郎に対する滞納処分としてこれを差押えるのは違法である旨主張するが右物件が原告末子の所有に属することを認めるに足る証拠はない。従つて右滞納処分はいずれの点からみても何等違法でないから、差押物件の返還請求の点について判断するまでもなく、被告地方事務所長に対する原告等の請求は全部失当として棄却すべきものである。よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 浜本一夫 鈴木敏夫 石川恭)

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